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1. 「仕切価格の月決め方式導入」まで
1970~1980年代は、原油価格や為替レートの変動が、石油業界の収益を大きく左右した(図2-8-3)。この時期には石油危機後の不況や消費節約等による需要減退に加え、大幅にコストが上昇しても、石油産業が石油業法下の規制産業であったために、政府が物価抑制の観点から製品価格への転嫁時期を遅らせる措置がとられ、大幅な赤字となることもあった(図2-8-4)。
しかし、1990年8月のイラクのクウェート侵攻に始まった湾岸危機において、通商産業省(現経済産業省)は国民生活に対する影響を考慮し、仕切価格の改定方式に関する通達を出した。
この方式は、原油(含む輸入製品)関連のコストのみを対象として、価格改定月の前月積みのFOB価格と直近1ヵ月の平均為替レート(TTS)をベースに、前月対比コスト変化を確定させ、仕切価格の改定を実施するものである。この「仕切価格の月決め方式」の採用により、石油各社は、内部努力で吸収できない最低限のコストについては、製品価格へ転嫁を認められるようになった。その結果、従来、石油業界の収益性に大きな影響を及ぼしていた原油価格と為替レートの変動は、ほぼ中立な要因となった。
- 図 2-8-3 為替レートと原油CIF価格の推移
出所:財務省貿易統計等より作成
- 図 2-8-4 石油産業の売上高・経常利益の推移(石油精製・元売全社)
出所:石油連盟資料より作成
2. 「新価格体系」への移行とその後
その後、1994年12月に特定石油製品輸入暫定措置法(特石法)の廃止が打ち出されたが、国内のガソリン市況は、特石法廃止の動きを先取りする形で価格競争が激化し、店頭価格の大幅な下落が始まった。主力油種であるガソリン価格の下落は、石油業界の収益を大きく圧迫することとなった。
1995年度末から1996年度初頭にかけて、多くの石油元売会社は、石油製品仕切価格について「新価格体系」への移行を発表した。これは、特石法廃止による石油製品輸入自由化を契機として、第一次石油危機以来、行政により形成されたガソリン独歩高の価格体系を見直し、税抜きで、海外の製品市況と同様にガソリン、灯油、軽油の3品がフラットな価格体系に変更するというものである。具体的には、海外製品と競合できるレベルまでガソリンの卸価格を引き下げ、一方、灯油、軽油については若干の値上げを行うというものであった。
この新価格体系の導入は、前年11月の経済審議会答申の「ガソリンコストが我が国における制約条件のもとで国際的に見ても遜色(そんしょく)のない水準になることを目指す」との指摘に沿ったもので、従来、ガソリンに偏っていた石油会社の収益構造の変換を促すこととなった。
しかし、その後大手スーパー等の新規参入業者の登場による価格競争のため原油価格上昇局面でも価格転嫁が進まなかったり、原油価格下降局面ではこれを先取りするかたちで市況が悪化したりで、石油業界の収益はコスト削減努力も追いつかず低迷した。
現在、石油各社は中期経営計画策定などにより経営の合理化・効率化に懸命に取り組んでいる。一方、原油価格は2008年半ばまで毎年上昇し続けてきたが、末端の価格競争などから価格転嫁は遅れ気味であった。ここ数年石油会社の経常利益を増加させてきた原因の1つは、決算上の在庫評価方法による影響である。原油価格高騰が継続する中、在庫の評価方法に総平均法を採用している石油会社が多く、期中の仕入れ価格より期首の在庫単価が安いため、決算上の売上原価が押し下げられるという在庫評価益である。しかし、2008年度は途中から原油価格が下降に転じ、期中の仕入れ価格より期首の在庫単価が高かったため、逆に多額の在庫評価損が発生し収益を圧迫することとなった。なお、2009年度は原油価格が再び上昇傾向となり、在庫評価益が発生した。
3. 他産業との経営指標比較
石油業界の収益性は、従来から他産業と比較して低水準となっている。2009年度の売上高経常利益率は製造業平均が2.95%に対し、石油業界の平均は0.20%となっている(図 2-8-5)。同じエネルギー産業である電力業界、都市ガス業界の売上高経常利益率(電力:4.52%、ガス:5.50%)と比較しても低い。
この低収益性により、株主資本比率も低水準で、製造業平均49.00%に対し、石油業界は20.40%と半分以下の水準である(図 2-8-5)。
石油産業は今後とも環境対策等のための設備投資や研究開発を推進するとともに、石油を安定的・効率的に供給していくための投資が必要であり、これらの巨額の投資負担を賄うためにも、安定した収益の確保と企業体質の改善が不可欠となっている。
- 図 2-8-5 石油と他産業との経営指標比較(2009年度)
出所:石油連盟資料より作成
「参考文献」
1)石油連盟:今日の石油産業2007~2011
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