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このページは、石油便覧トップの中の第4編の中の第2章の中の第6節 石油開発の契約と経済性のページです。




  1. 石油契約(産油国との契約)
  2. 石油会社(パートナー)間の契約
  3. 経済性評価

1. 石油契約(産油国との契約)

 石油会社が産油国で石油の探鉱・開発・生産活動を行うには、両者間で、石油契約を締結する必要がある。石油契約には、現在、各産油国の法制にもよるが、いくつかのタイプがある。概して先進国(米国、英国、オーストラリア等)では、これら石油契約は明確かつ安定的に確立されている。これは、長期にわたる石油開発プロジェクトでは重要なことである。

 代表的な石油契約の概略は、以下のとおりである。

ライセンス(License/Permit)契約

 主要実施国はノルウェー、英国、オーストラリア等である。

 地下の鉱物に対する権利は、地表権者ではなく、もともとは国(政府)に帰属するとの前提に立ち、政府が、競争入札等の方法により石油会社に鉱区における独占的な石油探鉱権を付与するタイプである。この権利を、一般にライセンスまたはパーミットと呼んでいる。その具体的な内容は、法令(石油法、鉱業法等)に基づいている。

 競争入札は、一般的には政府に対する義務作業(Minimum Work Commitment)の提示量で競われるが、その石油会社のこれまでの実績や資金力、技術力も審査の対象とされ、最終的には、政府のこうした裁量的判定をも経て、落札者が決定される。現在、英国領北海、オーストラリア海上では、それぞれの政府によりほぼ毎年のように、公開鉱区入札が実施されている。政府は、石油会社の原油・ガスの生産からの収益、利益に対して、法人所得税のほかにロイヤルティや特別税を課すが、特別税は政府の財政政策、産業政策等の影響を受けて変更されることがある。

リース(Lease)契約

 実施国は米国、カナダである。

 石油会社が、地表権および鉱業権を所有する土地所有者または鉱業権者との契約により、鉱業権(リース)を取得するタイプである。競争入札は一般的には一時金(Cash Bonus)の額で競われる。地下の鉱物の採掘・所有権(鉱業権)は、基本的には地表権とともに土地の所有者に帰属しているが、鉱業権は地表権から分離して譲渡することが可能となっている。この場合、鉱業権を付与する者をレサー(Lessor)、鉱業権を受ける者をレシー(Lessee)と呼んでいる。レサーが民間人の場合は、契約内容は原則として当事者の自由とされ、個別に約定される。通常、レサーは一時金(ボーナス)や生産物の一部(ロイヤルティ)を取得するが、残りの生産物は全てレシーに帰属する。政府所有地および海上(領海)については、法律で政府の監督権、鉱区の保有期限、ロイヤルティ等が規定されている。

 なお、近年、上記二つの石油契約の実質的な差異は小さくなっており、「ロイヤルティ/税システム」と総称されることが多い。

生産分与契約(Production Sharing Contract)

 主要実施国は、インドネシア、マレーシア、中国等多数である。

 1966年のインドネシアを第1号として、その後、多くの産油国で採用された。現在、発展途上国を中心に、石油契約の主流を占めている。生産分与契約の内容は、産油国によって異なるが、基本的な枠組みは次のとおりである。

  1. 地下資源は産油国に帰属し、産油国(政府または国営石油会社)が、石油会社を請負人(コントラクター)として探鉱作業を行わせ、探鉱作業にかかる費用とリスクは、全面的に石油会社が負う
  2. 石油が発見され、商業生産にこぎつけた場合、石油会社はこれまでの投下費用(操業費、開発費、探鉱費)を一定の取決めに従い、生産物から優先的に回収することができる(コスト回収原油)
    なお、国によって異なるが、毎年のコスト回収に一定の上限枠が設定されていることが多い
  3. コスト回収後の残りの生産物(利益原油)は、産油国と石油会社間で一定の比率で分配される
    この比率は、一般的に、石油会社のコスト回収完了前は石油会社側に、コスト回収後は産油国側に厚くなっており、石油会社は投下費用の早期回収を図れる一方、コスト回収後は、産油国側が利益の大半を取得し、石油会社の超過利潤は抑制されることになる。
  4. コントラクターは、産油国の税法に基づく所得税を課される
    また、国によっては、契約調印時のサインボーナス、一定水準の生産量が達成されたときの生産ボーナスやロイヤルティ、石油特別税を徴収する場合もある

リスクサービス契約(Risk Service Contract)

 生産原油の所有権および販売権は産油国側にあることを前提にするものであり、1960年代後半、中東で採用され、その後、南米諸国に普及した。外国石油会社が、そのリスクと費用負担による作業の結果、達成した原油の生産水準に応じて、生産物の一定割合または相当金額を「リスク負担に対する報酬」(Service Fee)として受け取る契約方式である。

 以上のとおり、産油国政府との石油契約は、いくつかのタイプに分類される。石油会社としては、探鉱開発投資を検討するに当たって、地質的な有望性その他の技術的側面からの評価はもちろんであるが、これに劣らず重要なのが、産油国の法・税制、政府や国営石油会社との契約条件等の検討・評価である。

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2. 石油会社(パートナー)間の契約

 石油開発事業は失敗の確率が大きいため、リスク分散のために、他の石油会社(パートナー)との共同事業として実施することが多い。石油開発にかかわるパートナー間の主な契約としては、共同スタデイおよび入札契約、共同操業契約、ファームイン契約等が挙げられる。以下、この三つの契約について述べる。

共同スタデイおよび入札契約(Joint Study and Bidding Agreement)

(1)契約の目的

 競争入札を通じて鉱区の権益を取得する際、同一の鉱区に関心をもつ複数の石油会社が、グループを構成して入札に臨む場合の当該石油会社間の契約をいう。石油会社側にとっても、鉱区を付与する側(産油国政府等)にとっても、以下のようなメリットがある。

 石油会社側

  1. 鉱区の技術評価能力の向上
  2. 1社当たりの技術評価費用の軽減
  3. 競争条件の緩和

 鉱区を付与する側

  1. 落札後の共同操業によって、単独操業より、より広範なベースでの資金と技術の確保が可能となる
  2. (特に発展途上国が鉱区を付与する場合)自国企業を入札グループに組み込ませ、自国企業の育成を図るなど、政策的な配慮が可能となる

(2)契約の骨子

  1. パートナーの参加比率およびオペレーター注1)の選任
  2. AMI注2)(Area of Mutual Interest)の設定
  3. 議決機関および方法
  4. 入札鉱区選定および入札内容(金額、義務作業等)の決定の手続き

共同操業契約(Joint Operating Agreement)

(1)契約の目的

 石油・ガスの共同所有鉱区における作業実施に関する石油会社間の契約をいい、当該鉱区での操業は、本契約により定められる。パートナーは、作業に関わる費用を権益比率に応じて負担し、生産物を権益比率に応じて得る関係にある。

(2)契約の骨子

  1. パートナーの参加比率およびオペレーター注3)の選任
  2. オペレーターの義務と権能
    • 作業計画案および予算案の作成と運営委員会への提出
    • 運営委員会が決定した探鉱・開発計画の遂行
    • 作業実施に必要な人員の雇用と機器資材等の資産購入
    • 作業に必要な諸契約の締結および法令等の順守
  3. 運営委員会の機能、役割、決議方法
  4. コスト分担方法
  5. 作業計画と予算
  6. 単独危険負担操業
    通常、共同所有鉱区の探鉱・開発作業は全パートナーで実施するが、リスクの大きな試掘作業等でパートナー間の意見が一致しない場合、賛成した当事者のみで作業を遂行することを単独危険負担操業と呼ぶ。作業への参加者は、非参加者権益分の費用も負担するが、成功後に非参加者が再び参入を希望する場合に、非参加者からのペナルティー(試掘の場合には費用の500~1,000%程度)等を受け取ることができる
  7. 権益譲渡(先買い権)
    あるパートナーが第三者に権益(または会社の株)を譲渡する場合、他のパートナーは、第三者が購入するのと同じ条件で、その権益(または会社の株)を優先購入する権利を有することを規定する例が多い
  8. 会計(オペレーターの管理費の負担、共同事業費の請求・支払方法、監査)

ファームアウト契約(Farmout Agreement)

(1)契約の目的

 石油・ガスの鉱区における探鉱・開発権の保有者が、費用負担の軽減や新たな技術の導入のために、権益の一部を留保して、残りの権益を他社に譲渡(もしくは全権益を譲渡)する契約をいう。

 ファームアウトに応じて権益を譲り受けることを、ファームインという。石油探鉱リスクを分散すると同時に、新たな資金や技術を導入し、探鉱を活性化させるメリットがある。

 ファームアウトを行う場合、ファーマー(対象権益の譲渡人)がファーミー(対象権益の譲受人)に対して、権益譲渡の対価としてファーミーの費用負担による坑井の掘削、ファーミーの取得権益より大きな掘削費用の超過負担、といった一定の条件を義務付けるのが普通である。

(2)契約の骨子

  1. ファームアウトの条件
  2. 権益譲渡の時期および手続き

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3. 経済性評価

 石油開発事業は、鉱区取得から生産にこぎつけるまでに、通常、数年から10年以上を要する事業である。従って、経済性の評価にも「時間」の概念を折り込んで検討する必要があり、NPV(Net Present Value:現在価値)、IRR(Internal Rate of Return:投資収益率)等の指標が、ペイアウト、キャッシュフロー(当該プロジェクトの年次別資金収支)とともによく使用される。

 経済性評価は、石油開発事業の実行に関する様々な局面での意思決定を行う際に重要な判断材料であり、例えば探鉱鉱区取得、探鉱期間の延長、開発段階への移行、事業からの撤退、生産資産の買収や売却等を検討するときなど多岐にわたる。また、産油国との石油契約締結の交渉や、石油会社とのファームイン契約の交渉においても、経済性を計算して交渉を行う。

NPVとIRR

 石油利権契約で定められた経済条件およびその国の税制を基に、毎年の収入(売上げ = 取り分生産量 × 価格)から費用(探鉱費、開発費、操業費、管理費等)を控除して、キャッシュフローが求められる。その毎年のキャッシュフローを一定の割引率で割り引くことによって、現在価値を求める。

 

 一方、毎年のキャッシュフローの現在価値の合計がゼロになる割引率が、そのプロジェクトのIRRとなる。

 また、上記二つの指標以外に、ペイアウト(ネットキャッシュフローの累計がゼロになる年数)等ほかの評価指標が使われることもあるが、いずれも経済性の全ての側面を表すものではないため、通常は複数の評価指標を組み合わせて最終評価を行う場合が多い。

リスク評価

 一般に、他の事業に比べて石油開発事業には多くの不確定要素が存在し、それらが事業の経済性に与える影響はきわめて大きい。例えば、1坑の試掘によって商業化可能な規模の原油または天然ガスを発見できるのは、数パーセントの確率といわれる。また、探鉱・開発段階といった長い先行投資期間を経て生産段階に至るため、原油・ガス価格や為替レート等も大きく変動する可能性が高い。

 このため、このような不確定要素の変動によって生じるリスクを前もって分析し、把握することが経済性評価を行ううえできわめて重要となる。実際にリスクを折り込んで経済性評価を行う方法には、次のようなものがある。

  1. 原油・天然ガス価格、生産量、探鉱・開発費等変動する可能性の高い項目について、それぞれが変化したとき、経済性の計算結果がどの程度変化するかを調べる方法。これは、感度分析と呼ばれる
  2. 変動する可能性の高い項目について、それぞれの変化が起こりうる確率とその変化が起こった場合の経済性の計算結果を求め、加重平均をとって期待値を算出したり、標準偏差によってリスクの幅を把握したりするなど統計処理を施す方法

 これらの方法についても、ケース・バイ・ケースでいずれかを選択する場合と複数の方法が併用される場合がある。本来、経済性の評価方法や評価基準は個々の企業に固有なものであり、その時々の経営方針や事業戦略を反映して決定されるものであることはいうまでもない。

[注]

注1)本契約に従い、実際のスタデイおよび入札手続きを実施・管理する当事者。スタデイについては、他のパートナーも参加して共同で実施することもある。

注2)入札対象鉱区の近隣地域を指し、この地域で当該入札グループに属する石油会社が、当該グループとは別に鉱区の権益を取得した場合には、当該グループの他社は、その権益の一部を譲り受ける権利をもつ。

注3)本契約に従い、実際の操業を実施・管理する当事者。

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第4編 石油産業の活動

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