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1. 保全の目的
設備保全の目的は、信頼性の高い設備管理により、プラントの安全かつ安定的、効率的な長期連続運転を可能とすることである。
過去の点検履歴や事例を反映した設備保全計画を立案、実施して、設備の信頼性を高めることにより、安全かつ効率的な製油所の運営を目指すとともに、保全作業員の配置、工事用資機材の効率的利用あるいはコスト解析等によるコストダウンを努めることが重要である。
2. 製油所における保全の特色
製油所の設備保全の特色として、以下の点が挙げられる。
(1)長期的計画性や人員、資材の短期集中投入が必要
石油精製装置の停止は大きな生産ロスにつながるため、定期修理等の場合はあらかじめ計画された時期、期間で実施する必要があり、限られた期間内で実施するためには、人員、資機材の短期集中投入が必要になる
(2)専門技術が必要
塔、槽、熱交換器、加熱炉、配管、回転機械、電気設備、計装設備、コンピューター、ボイラー、桟橋、タンク、建物および線路等対象とする設備が多岐にわたっており、各種の専門技術が必要とされる。
(3)設備の劣化原因が運転条件と密接に関係
原油中および生産工程で生成するものには様々な腐食性物質、劣化を促進する物質が含まれている。一方、装置は高温、高圧から低温、低圧までいろいろな条件で運転されている。これらの組合せにより、設備には多種多様の腐食、劣化発生の可能性がある。
(4)装置の停止時保全と運転中保全
装置を停止させることを、シャットダウンまたは消火という。シャットダウンメンテナンスは、装置を停止して機器の検査、整備や補修を行うことであり、装置を安全かつ効率的に運転できるようにするのが目的である。検査範囲や方法は、各種の適用法規および社内基準を参考にしながら、事前に十分な検討を経て決定される。また、検査計画の立案および検査結果の評価の際には、過去の検査履歴が有効に利用される。
これに対してオンストリームメンテナンスは、装置の運転中に行われる検査、整備および補修であり、運転中でも保全が可能な設備、例えば予備機のあるポンプ、バイパス配管のある機器およびオフサイト設備には、この方法がとられている。
3. 保全組織
設備管理を信頼性高くかつ効率的に行うためには、それに適した組織が必要である。設備管理は業務範囲が広く、各種の専門分野にわたるため、組織内あるいは組織間の業務を円滑に進めることができるよう、各種基準類を整備するとともに、コンピューターシステムによってそれが十分に活用されるようにする。
設備管理をシステム化する場合は、予算管理、工程管理、工事・検査計画等、保全業務に関わるノウハウを蓄積でき、各担当の業務をサポート出来るよう工夫するのが一般的である。また近年は、設備管理の信頼性向上のため、運転情報や安全管理情報も取り込めるシステムとする例もある。
4. 保全検査
保全検査には、検査対象物から試験材を採取し、各種の機械的な検査を行う「破壊検査」と、破壊を伴わずに物理的・化学的性質を利用した各種検査機器を用いて行う「非破壊検査」がある。今日では、非破壊検査の進歩がめざましく、各種の非破壊検査法から得られるデータは、安全性の確保、適切な補修時期・範囲および補修方法の決定に重要な役割を果たしている。
非破壊検査には、超音波探傷検査、放射線透過検査、磁粉探傷検査、浸透探傷検査、赤外線放射温度測定等がある。
5. 安全活動
事故の発生要因は、人的要因(ヒューマンエラー等)と設備的要因に分けられる。経済産業省の産業事故調査結果(2003年12月)によると、マニュアルの不遵守等(誤操作・誤判断)および未整備等(管理・操作基準の不備)の人的要因が76%(化学系業種は60%)を占めている。製油所では、人的要因による事故の未然防止のため、以下の諸活動を行っている。
(1)危険予知活動
略して、KYKという。作業を開始する前に、起こる可能性のある災害を想定し、その防止対策をたてることによって災害を未然に防止する活動である。一般的には、4ラウンド(R)法注1)KYが行われているが、最近では、比較的短時間で実施可能な1ラウンド、或いはワンポイントKYが採用されている。
(2)ヒヤリハット活動
ヒヤリハットとは、災害や事故に至らなかったものの、作業中に「ヒヤッ」としたり「ハッ」としたりする事象のことを指すが、このヒヤリ・ハットの発生を、危険の信号・重大事故の前兆としてとらえ(ハインリッヒの法則:1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在するというもの)、各個人の経験を蓄積・共有し、事故に至らないための対策を立案する活動がヒヤリハット活動である。
(3)指差し呼称活動
作業を安全に誤りなく進めるために、危険を伴う作業の要所要所で確認すべき対象をしっかり見つめ、指を差し、「○○、ヨシ!」などと、大きな声で確認するのが指差し呼称である。指差し呼称による確認は、ただ見て頭の中で確認するだけの場合に比べて誤り率を少なくでき、「うっかり」「ぼんやり」などを防ぎ、作業の正確度を高めるのに効果的である。
(4)類似災害防止活動
社内外で起きた事故を「他山の石」とし、自職場では、同じような事故を起こさないための学習活動をいう。保安部署が入手した事故情報の速やかな周知徹底を図るため、類似災害防止委員会などを組織して活動する。各職場での検討結果、委員会での審議結果は、オペレータ全員に周知を徹底し、事故防止の意識向上を図る。
(5)安全パトロール活動
協力会社員を含む製油所員が参加し、区分された各エリアを、五感を働かせてパトロールし、設備、作業環境などの不備や改善点など早期発見し、トラブルの未然防止を図る活動である。不備を見つけたら担当職場に連絡し、不安全行動はその場で是正処置を取り、その場で対応の取れない事項は担当職場と保安部署などに報告されフォローされる。
(6) その他
リスクマネジメント体制の構築(社長・役員・本社関係各部による製油所環境安全総合監査)、安全文化醸成・感性アップのための安全通信、コミュニケーション向上のためのセーフティーミーティング・現場密着型の安全支援、各種講演会セミナーへの出席、定期修理作業・工事における安全に関する注意事項をまとめた資料作成・配布、協力会社への安全教育・指導、交通事故防止活動などを実施している。
[注]
注1)危険予知トレーニングの手順で、以下の4つの質問を順に投げかけ、みんなで考えを出し合って、危険予知から対策までを話し合うこと。
| 第1R(現状把握) | どんな危険が、ひそんでいるか |
| 第2R(本質追究) | これが、危険のポイントだ |
| 第3R(対策樹立) | あなたなら、どうする |
| 第4R(目標設定) | 私たちは、こうする |
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